イヌマンディアス
@inumandias
In Dog We Trust 最近は米国政治情勢分析中心。 哲学、政治学など関心分野は統治性論、権力論、制度論、政治神学、福祉社会論、ポストヒューマン、動物倫理、キリスト教ナショナリズム、AI、AIと持続可能性の問題、いぬ、ねこ、たぬきなど。
Great American State Fair、失敗した政治集会のような悲しい雰囲気が漂っている。出演予定だったミュージシャンたちにキャンセルされまくったかわりに「全盛期のエルビスよりもはるかに大勢の観客を集め、しかもギターなしでそれをやってのける」男、ドナルド・J・トランプを呼び物にしたはずだったのに、おかしい……。しかし、たしかに開会式はめちゃ党派的な雰囲気だったし、非党派的なイベントだと説明されていたことを理由にキャンセルしたミュージシャンたちは正しかった。
トランプも19日の署名後に開放されるだろうという表現に言い直した模様。また機雷除去に言及しており、これがG7で取り上げられる可能性は高いように思う。G7までに合意を成立させるという目標はあったのではないかと思うが(あと可能ならトランプの誕生日に成立させたかったのだろう)、それを達成したことで、国際社会を巻き込む形で枠組みを形成してイランに圧力をかけうる状況が生まれている。しかしやはりレバノンが脆弱なポイントになっている。
中東諸国も関与する形での覚書であり、トランプが前向きなメッセージを発している以上、とりあえず合意はできそうではあるが……。高濃縮ウラン問題やホルムズ海峡問題で双方がレッドラインを譲るとは思いにくい。あとイスラエルは覚書の当事国として挙げられておらず、政治的に抑えるということなのだろうが、ネタニヤフが素直に従うとも思えず、レバノン情勢が沈静化する見込みは低く、かなり不安定な覚書になりそうな気はする。
政教分離についての調査を見ても、キリスト教ナショナリズム的価値観は社会の中で目立つようになってはいるが、全体としては衰退傾向にあると思われる。しかし、だからこそ少数派としての危機感が強まり、より急進的なキリスト教ナショナリズムを求める右派層は、同じ価値観を持つ人々が権力を握ることでトップダウン的な変化をもたらされることを求めたり、法制度を、憲法秩序に有利な前例を作り上げようとする法廷闘争や、草の根運動を通じて変えたりすることでキリスト教ナショナリズム化を進めている。右のグラフからは、少数派とはいってもキリスト教の国教化を望む人々が増加しており、キリスト教ナショナリズムの急進化を感じさせる。
FOXニュースでも満足できないのなら、トランプが気に入りそうなメディアはそれこそトランプ政権は基本的に全肯定、リベラル系の人物が出演する可能性はゼロ、敵や批判者は容易にサタンや悪霊の影響を受けた存在や聖書的・道徳的に誤った存在にされるカリスマ派系ニュースメディアFlashpointとかしか思いつかない。
トランプがいちいち威嚇的な投稿して圧力をかけようとしていなければ、直接交渉が成立していてもおかしくはないんだけどね。トランプは核問題をアピールできる成果にしたい感があり、それはイランにとっては屈服したことになってしまうラインになっているように思う。現状ではこの溝が埋まるような気はしないし、本来、相互に抑制的に地道に協議を積み重ねないと進まないような話なので、まず恫喝しながら大枠を決めたがるトランプのスタイルとも噛み合っていない。仮に大枠が決まったところで、いちいちトランプが口挟んで協議を困難にするのは目に見えているし、信頼できない相手同士が詳細を詰めて合意を形にするのはほとんど不可能に思える。
なぜトランプは相手を恫喝し、侮辱しながらしか交渉できないのか。そういうのでうまくいく相手でも状況でもない。急激なエスカレーションを望んでいないのはトランプも同じだろうに。
なお、ヘグセスは正戦論は国際法とは違って手段の正当性を要求しないかのような誤った議論を展開し、その延長線上において、アメリカを守るための戦争を正当化し、原爆投下まで正当化している。目的さえ正しく、敵がルールに従わない悪だと言えるなら、手段の正当化は問題にならないという文脈で、ヘグセスは正戦論を用いている。ヴァンスはヘグセスよりは抑制的な言い方だが、第二次大戦に言及することで、類似の議論を示唆しているように思う。
ここで人文系アピールのために、フランスの哲学者ポール・リクールの大著、『記憶・忘却・歴史』冒頭における若き日のエマニュエル・マクロンへの謝辞をアップロードします。なお、同書の内容は、わたしの記憶からはすでに忘却され、歴史の彼方へと消失しています。